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新星イリア・マリニン、グランプリファイナル2022感想、ルール改正2022他

 以前の記事でネイサン・チェンは現役引退を明言していませんが、今季は休養し試合には出場しない意向だと記述しました。そのことについて残念に思っていると、イリア・マリニンが話していました。彼は間違いなく、今後を担う期待選手の一人でしょう。ネイサンの次に、アメリカのエースとしてフィギュアスケートを盛り上げる存在になることでしょう。マリニンは昨シーズン(2021-22年)から急激な成長を見せてきました。そして、昨シーズンまでジュニア選手でもあり、ジュニア兼シニア選手として試合に出場していました。昨季はジュニア選手として出場したグランプリシリーズ2021で優勝(ファイナル2021は中止)、世界ジュニア選手権2022でも優勝を飾り、国内大会である全米選手権2022ではネイサンに次ぐ準優勝、(シニア)世界選手権2022では9位と10位以内に入り、代表枠獲得に貢献しました。今季から正式にシニアへ移行しました。シニア移行後、(USインターナショナルクラシック2022で)前人未到のクワッドアクセル(4A)を世界で初めて成功させ、その偉業は大きな話題となりました。試合で挑むかは別として、アクセルの他にも全ての4回転ジャンプを跳ぶことができます。ジャンプは全部で6種類あり、その全ての4回転ジャンプを跳べるわけですからね。驚愕であり、今月12月に誕生日を迎えた18才の新星マリニン。またネイサンとはタイプが違いますから、彼は今後どのような選手になるのか非常に楽しみですね。

 そんな上り調子のマリニンですが、今月開催されたグランプリファイナル2022では銅メダルを獲得しました。ショートプログラムでミスがありました。彼は4回転アクセルを練習しているからなのか、3回転アクセルが不調気味でした。4回転が跳べるのだから3回転なんて楽勝だろうと思うかもしれませんが、4回転と3回転では力の使い方やコントロール方法などが異なりますから、支障をきたしたのでしょう。これは練習で克服できるものですが、4回転半ジャンプですから未知の世界であり、人間の限界を超えて5回転ジャンパーが現れる日は遠くないのかもしれません。そういえば、男子選手で4回転ジャンプ無しでオリンピックチャンピオンになったエバン・ライサチェクがいましたね。あの頃、バンクーバー五輪2010までは4回転ジャンプ無しでも世界でメダルを獲ることができた時代がありました。あの時、エフゲニー・プルシェンコは4回転に挑みましたが点数が伸びず、ライサチェクに次ぐ銀メダルでした。約10年前と現在では、信じられないほど技術の高い選手が現れました。昔の男子選手は、SPとFSの最初に4回転ジャンプを組み、低い成功率にも関わらず挑戦し、成功すればラッキー、失敗しても仕方ないような感じでした。そして、4回転を成功させた時はフィーバーですよ、アナウンサーや解説者、観客は盛り上がる盛り上がる。現在は4回転ジャンプを跳んだところで驚く人はいなくなり、試合で4回転ジャンプを組むことが当たり前の時代です。4回転ジャンプ無しでは男子選手は世界で戦うことは困難でしょう。

 そういえば、グランプリファイナル2022でマリニン選手の隣にマリニンと顔が似ているコーチ(父)の姿がありました。そう、マリニン選手の両親はウズベキスタン代表の元フィギュアスケーターです。ご存じの人もいるでしょう、母親はタチアナ・マリニナ(選手)!キスアンドクライで両親に挟まれているジュニア時代のマリニンを何度か見たことがあります。あの実力と才能は、もしかしてと思ったりもします。

 グランプリファイナル2022でマリニンが3位、2位は山本草太!優勝は宇野昌磨!宇野選手も山本選手もファイナルがグランプリシリーズよりも良い結果でした。演技も素晴らしく、パーソナルベストを更新しました。山本は怪我に苦しんだ時期もありましたが、それを乗り越え、グランプリファイナルに初出場しました。グランプリファイナルが3年ぶりに開催されたこともあり、宇野以外の5人はファイナル初出場です。そう、誰が勝っても初優勝でした。ただ、宇野は他選手よりレベル一つ抜き出ていました。まだまだマリニンよりも宇野の方がスケーティングスキルが高いですが、なんだか羽生とネイサンを見ているような気持ちになります。高難度ジャンプに挑むことは、それだけリスクも高くなりますから、いかに安定した演技ができるか、そこが勝負どころです。宇野にはジャンプを失敗しても他でリカバリーできる力があります。スピンなどでレベルの取りこぼしがいくつかあったので、少し惜しかったですね。それにしても、オリンピックでもそうですが、本当に勝負強いですね。ここぞという大会で非常に演技が安定しており、ファイナルでは完璧に近い出来でした。ジャンプが少し回り過ぎと思うほど、回転に余裕があり、高さも幅もあり、流れも完璧でした。男子の場合、回転不足気味の選手は少ないかと思いますね。韓国のジュンファンはたまに回転不足気味な時があります。女子では紀平梨花選手が回転不足気味ですね。以前から紀平は低空ジャンプ気味でしたが、今シーズンは特に回転がギリギリ、もしくは回転不足気味かなと感じることがあります。ジュニアファイナル2022で島田麻央選手がコンビネーションジャンプの最初のジャンプにQ判定がありましたが、スローで見ても回転不足ではないような気がします。なんだか、今季のファイナルは男女ともにジャッジ(テクニカル)の判定が厳しいように思いました。

 イリア・マリニン選手の演技を見ていて感じたことは、彼はジャンプの幅をとらず、高さを出して、回転して着氷します。他選手と比較してもジャンプの空中時間は同じです。宇野や坂本は弧を描くような山型ジャンプであり、特に坂本は助走を活かしたジャンプなので、小さな力で大きなジャンプを跳ぶことができます。助走スピードを上手に活かし、かつエッジワークが深いので、余分な力なしで流れのあるジャンプに繋がります。一方、マリニンは楕円形ジャンプになるわけです。三浦も楕円形ジャンプに近いですね。三浦はジャンプの回転が速く、スローで見ても速いです。ファイナルでは5位でしたが、これからもっと伸びるでしょう。あれほど回転速度のあるジャンプを安定して着氷することは難しいでしょう。佐藤、三浦、鍵山、彼らの世代が近づいています。あのスピードにのった佐藤のジャンプには特大点を与えたくなるでしょう。テレビ越しでは伝わらないかもしれませんが、あのスピードのあるダイナミックジャンプは凄いですよ。そして、ジャンプ軸が美しい。一方、山本は教科書のような見本となるような選手ですね。何かしら個性や強み、大技があれば、それが区別化になります。標準であれば、常に平均的な評価をもらうことができますから、これも大きな強みです。ジャッジも人間なので好き嫌いが表れることもあるでしょう。誰が見ても良いと、そのようなものは一握りですから。

 それから、ルール改正されたこともいろいろと語りたいのですが、記事の文字数が限界に近づいてきました。簡単に説明すると、いろいろと変更がありまして、ジャンプシークエンスはセカンドがアクセル限定で2本までだったのですが、今シーズンより3本まで組むことが可能となりました。基礎点も80%から100%へフルになるため、取り入れる選手が以前よりも増えましたね。あとは、ジャンプコンビ間のチェンジエッジは減点になります。ステップはツイズル、ループ、ロッカー、カウンター、ブランケット、難しい組み合わせで連続すること。例えば、ロッカー・カウンター・ツイズル、とか。コレオグラフィックは2つ以上の動きを組み合わせる必要があります。クロスやストローク以外でハイドロやイーグル、スパイラルなど。ざっくりと説明していますが、本当にルールが細かいです。特にスピンは、レベル4になるには、6つの要件があるのですよ。まず、スピンの入り方と出方が分かれました。そして、シットからキャメルとか、同じ足での姿勢変更。シット、キャメル、レイバック、ビールマンでの明確なエッジ変更同じ姿勢での回転速度の増加。フライングスピンは飛び跳ねて入るスピンのことで、着氷後の2回転以内に基本姿勢になるエントリーの難しい明確なバリエーションシットまたはキャメルのポジションのまま繋げて行う両方向のスピン、各回転方向で3回転以上は必要です。選手は難しい出方をいろいろと工夫していますね。新ルールに沿ったものを導入することは初めのうちは大変ですが、観ている側はバリエーション豊富で楽しいですね。

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