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ロシア薬物の闇:前編

 カミラ・ワリエワは現在も懲罰手続きの対象になっています。国際オリンピック委員会IOC)は適切な選手に適切なメダルを授与したいという意向があります。ドーピング問題を巡り、ロシアへの世界の不信感は根強いです。以前、16才未満の体内から禁止薬物が検出された問題を記事にしましたが、今回はもう少し深くロシアの闇の部分について解説します。

 事の発端は、昨年(2021年)12月のロシア国内大会でロシア反ドーピング機関(RUSADA)がワリエワの検体を採取した結果、禁止薬物(トリメタジジン)が検出されました。今月8日、その分析結果(ドーピング陽性)の通告がありました。新型コロナ渦ということもありますが、採取から報告まで時間がかかり過ぎなような気もします。

 ワリエワは暫定的に資格停止になりましたが、すぐに解除されました。その解除理由は、彼女は15才のため、要保護者に該当するため。検査結果の通知に問題があり、それはアスリートの責任ではないため。それもまた、理由がしっくり来ず、不可解な点があります。

 

スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定

(ワリエワは)16才未満であり、世界反ドーピング機関(WADA)の規約に基づく保護対象者である

WADAの規約

規定違反を理解できない若年者(16才未満)は、そのような特定の状況下では、他のアスリートとは異なる対処方法がとられる

 

つまり、要保護者の身では、(自身で)体内侵入経路を証明することが難しく、(負担を軽減するという観点から)16才未満に法的な負担をかけることは酷であると。

スポーツ仲裁裁判所(CAS)とは

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、選手や競技団体などの間で起きる争いの解決を目指す組織です。スポーツ界の最高裁判所であり、裁定は最終判断になります。ドーピング検査への不服、選手選考や競技結果への不服なども扱います。昔は国際オリンピック委員会IOC)内にありましたが、現在は独立しています。

 裁定までの流れは、まず、当事者双方がスポーツ仲裁裁判所に登録されているスポーツに詳しい世界の法律家や専門家から仲裁人を一人ずつ選びます。次に、その二人が仲裁者を選びます。そして、三人で資料を調べ、関係者への聞き取りなどを通して、約半年~一年くらいかけて決定します。また、五輪期間中の申し立てについては、原則一日(24時間)以内に結論を出すという目安があります。これは、大会の進行への影響を配慮してのことです。

ロシアの闇

 2014年にドイツのドキュメンタリー番組でロシア陸上界の組織的なドーピング疑惑が報道されました。それを受け、その翌年、世界反ドーピング機関(WADA)がロシアのドーピングについて調査を開始しました。その結果、2011~2015年に夏季・冬季五輪などで1,000人以上の選手がドーピングに関与したことが分かりました。よって、国家ぐるみの組織的なドーピングや隠ぺい工作があったと断定されます。その後、IOC、IPCに対してリオデジャネイロ五輪2016へのロシア選手団参加拒否の検討を勧告します。それにより、IOCは各競技の国際連盟に判断を委ねました。ロシアの参加は条件付きで容認に。一方、IPCは国としても個人としてもロシア選手団の参加を全面不可に。平昌五輪2018では、IOC、IPC、共に国としての出場は不可に。(潔白を証明した選手は)個人として参加できます。現在もロシア選手はロシア・オリンピック委員会(ROC)の一員として五輪に出場しています。ロシアの国旗掲揚や国歌斉唱は無し。ROCとして団体競技にも参加できることから、他国から疑問の声が上がっています。

 以前の記事でも少し触れたのですが、2019年にロシア反ドーピング機構(RUSADA)がデータ改ざんをしていたことが発覚しました。翌年、スポーツ仲裁裁判所は、そのロシアの組織的なドーピングを認定しました。そのため、ロシア選手団は今年(2022年)12月16日までは主要国際大会に国として参加できないとし、潔白を証明した選手、つまり、違反歴の無い選手のみ個人資格での出場が認められました。

 何度も繰り返されるドーピング問題。ロシアに対してWADAだけではなく、IOCも厳しい態度をとるようになってきました。

 

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